【自虐的な君に】5のお題

笑顔で真実を隠してしまわないで

 いつもニコニコと笑っているから大事なことに気づき難い。
 パーチェがなにか隠していることをは気づいていたが、それでも聞き出せなかったのは彼女の落ち度だ。いつか話してくれるのではないかという驕りが生んだ状況に、今までにないくらいに彼女は自分のことを悔いた。姿の見えなくなったパーチェに「馬鹿」と詰ることしかできないほどに彼女は無力だ。

「なんで、いっつも」

 大事なことはうやむやにして、いつもと同じように笑っているのだ。楽しそうに、キラキラと、慈しむように、諦めたように。
 パーチェのことはにはよく分からない。兄のような弟のような、不思議な青年だ。それは今も昔も変わらない。路地裏でごつん、と背中を凭れかけ空を見あげれば随分と空は青い。妙に泣きたくなるのはパーチェのせいだ。無理やりそう決めつけてぐっと涙をこらえていると、人の気配を感じは姿勢を正す。


「何してんの、こんなとこで」
「……そっちこそ」
「……散歩?」
「疑問形なんだ」

 しばらくぶりにあったパーチェの顔は何となく疲れているように見えた。パーチェの能力のせいかと一瞬の顔色が悪くなったが、彼は慌てて「あ、違う違う」と手を振る。どうやら彼女の勘違いを察したらしい。

「そのへんはね、もう俺、諦めてるから」
「……諦めてるの?」
「うん、だって、こればっかりはしょうがないかなって思うしさ」

 それだったら一日一日を大事にしたいなって、笑っていたいなって思うんだ。
 付け加えるように、言葉を紡いだパーチェには頬になにか熱いものが伝うのを感じた。
 ああ、これは涙だ。そう認識すれば溢れ出したものが止まらないのは必然でボロボロとこぼれ落ちてくる。ぎょっとしたパーチェに「五月蝿い」と払いのけて「馬鹿」と付け加え、彼の胸ぐらを彼女はつかんだ。

「しょうがないなんて、言わないで」

「そんな風に笑ってごまかさないで」

 生きたいって言って。もっと頼って。笑わないで。
 無茶で、無謀で、言った所でどうにかなる問題でもないというのに彼女は泣いて彼に懇願する。パーチェは困ったように笑って「ごめん」との頭をぽん、ぽん、と撫でた。けれどそれさえ彼女は首を振り「嫌だ」と繰り返す。まるで子供のように、何度も何度も、繰り返して泣きじゃくる。

「俺もね、毎日皆と馬鹿騒ぎしてるの、好きなんだ」

 だから、それを守っていたいんだ。
 ぽつぽつといったパーチェに馬鹿、とはつぶやく。そんなもの、守った所で、守って死んだ所で、パーチェが居なければ始まらないのに。

「笑ってよ、
「嫌」
「どうしても?」
「笑ってほしかったら、生きなさいよ、馬鹿」

 泣いた彼女に「それもそうだ」とパーチェはコロコロと笑ってみせた。
 彼女が能力を使うのが先か、彼らのドンナが運命の輪を使うのが先か、真相はフォルトゥナのみが知る。

2011.11.16. up.