もっと頼ってくれればいいのに
「パーチェってさー」
「んー」
「結局人頼らないよね」
得物の手入れをするはパーチェを見ずに世間話をするように言う。唐突すぎる言い分に何事かと首だけパーチェが振り返るがは相変わらず得物に集中しているのか全く此方を見ようとしない。
何言ってるの、と聞けば「なんとなく」とだけ返される。会話のキャッチボールにならないこの状況はいつものことなので、パーチェももう慣れっこだ。
「もさー」
「うん?」
「あんま、人頼らないよね」
「少なからずパーチェには甘えてると思うけどなあ」
反論をしても彼女は全く気にもとめず、笑った。少しばかりパーチェはむっとしたのか背中をずいと彼女に寄せると「重い!」と悲鳴が上がる。だが、やめてはやらない。グイグイともっと体を寄せるとは「ギブギブ!」とばしばしと床を叩いた。
「もう、何なの本当」
「さー」
「何?」
「もっと俺頼りなよ」
結構俺包容力あるよー、両腕を広げてニコニコと笑うパーチェには唖然としたが、次の瞬間にはぎゅうぎゅうと痛みを感じるまでに抱きしめられ目を丸くする。
理解力が乏しいからか、どうしたらいいのかわからず困惑すれば「頼ってよ」とまるで懇願するようにパーチェは彼女の耳元で囁く。犬のようだとか子供のようだとか言われるパーチェの意外といえば意外で、当然と言えば当然の顔に自然とドクン、と心臓が跳ねるのをは感じ取った。
「……頼ってるよ」
「うっそだ」
「頼ってなかったら今頃殴ってる」
「えー」
しょうがないなあ。素直じゃないなあ。笑うパーチェには聞こえない聞こえないと首を振りやがて、根負けしたように抵抗をやめた。
頬に手を添えられて、彼は眼鏡の奥でにこりと笑う。いつもと変わらぬ、いつもと同じ笑顔だ。
「俺も、これでも結構頼りにしてるってこと、分かった?」
「……分かんない」
「えー!」
非難の声を上げたパーチェに、はつられてクスクスと笑い、頬に添えられた手に行場のなかった自分の手を添えた。手の形はパーチェのものとは違う。だが、温かさはあった。じんわりと伝わる温かさには自分にできる最上級の笑顔を浮かべて、彼に言う。
「頼りにしてるよ、パーチェ」
「ん? おう!」
任せろ。にこりと笑った彼は矢張り、いつもと変わらぬ、太陽のような笑顔だった。