05 // 息ヲ潜メタ夢欠片

サァン」

さらさらと髪が揺れる中、颯爽とが教室に向かって歩いていると行く道を五人の女性に阻まれる。その中心にいた女性に関してはも噂ばかりは耳にしたことがある、百貨店の令嬢だ。
気の強い、物事に対して白黒つける性格の彼女に苦手意識を持つ女性も中々に多いらしく、の友人の一名も重々しい溜息をついていたのを思い出した。


「なんでしょうか」

は足を止めて彼女たちを見据えると、その令嬢は頭から爪先まで舐めるようにを見た後に、露骨に鼻で嗤った。
宮ノ杜家と親交のある人だと聞いて会ってみたら、マア何ともみすぼらしい。
口先で嗤うその女を見ながらは誰かに、何かに似ている様な既視感を覚える。何に、誰に似ているのかと懇々と考え始めると、女はが何も言わないことをいいことに倩と、彼女の外見を莫迦にした。

こんな方が首席、品行方正だなんて、学院長先生は何をお考えなのかしら。

その言葉に御尤もである、と考えたのは他でもないなのだが、此処で同意をすればまた「アレ」であると言われるので、さらりと話を流す。主に話をしているのは百貨店の令嬢ばかりで、他の四人は同意ばかりだ。元来女性は皆固まることが多いのであると耳にしていたので、道理でと納得していれば、令嬢はの態度に苛ついたのか、高笑いをする。


の家と言っても使用人に手を出し勘当されるような御両親ですものネェ、御兄弟がコロリで亡くなって、ヨウ御座いましたねェ」

鼻で笑い嘲笑する女に、は内心舌を出した。
馬鹿馬鹿しい。
そんな話はこの家に彼女が引き戻されたあの日から、とうの昔に聞き飽きた。


「……それで、何か御用ですか?」

話という話にすらなりもしないせいか、は辟易し、平静を保ちながら尋ねると彼女は咳払いを一つして、その釣り目を鋭くさせて良いこと、と指を差した。

「宮ノ杜等、所詮一代でのし上がった汚らわしい家です。其の様な家の、それも情報屋と結婚だなんて私は絶対にお断りですから!」

……は意味が分からず、は、あ?と首を傾げた。 何を言い出しているのか分からない。の反応に満足したのか彼女は皆さん、行きませう、と踵を返しスタスタと歩き出してしまう。
取り残されたは首を傾げたが、やがて彼女が誰かに似ている事への答えに気づき、あゝ、と声を上げた。


「サナ枝様!」

何人かの女學生がを振り返ったが、はつっかえが取れたことにより、満足気に微笑んだものの根本的問題を思い出し、思わずため息をついた。
宮ノ杜の次男との関係は今までの中でも最悪に悪化している。この状況を打破しなくてはと思う気持ちと、意味の分からない怒り方をした勇の態度に腹立てるのだ。
流石に堪忍してやれと先日正が言うので顔を出せば不在というし、全くには勇が分からない。


「あー……」

悩んで解決してまた悩んで。繰り返し繰り返し悩む。
悩むといえば、先日彼女がもらった手紙もしかりだ。エスのことも考えなければならず、は悩ましく窓へ寄りかかりため息をこぼす。
アンニュイな佇まいにほう、とため息をこぼす生徒がいたことに勿論は気付かない。
そういえば、もう、二週間ほど、勇に会って居なかった。
会いたい、というのは初めての感情で、どうして「会いたい」と思うのかはよく分からない。
喧嘩を売ったのは勇で、は勇に腹立っているはずだというのに、どうにもこうにも、上手く感情が説明できないが、無性に会いたい、などと思ったのである。


2012.1.25