「今日も今日とて大人気だな、
「……あなたも今日も今日とてパパラッチ?」

楽屋に花束が届けられたと同時に、届けてきた少年は深くかぶっていた帽子をぱっと外しいたずらが成功した子供のように笑った。その姿に、呆れて、そして次にはくすくすと笑う。
ロシュとの関係は人にうまく説明が出来ない。
ロシュは花束をに手渡すと側にあった椅子に腰掛けて上から下までをじっと眺めて「今日の衣装も似合うな」と賞賛の声を上げた。

「今日は一人?」
「ん、ああ。まぁ、お前の様子見るのも仕事だしな。でもアンジェをニクスが連れてきてる」
「また?」

女王の卵。ロシュの目下現在のパパラッチの対象の少女はふんわりと柔らかい笑顔をしていて、とても宇宙を統べる人間とは思えない。
思い出したかのように笑ったロシュに、もアンジェリークのことを慈愛を込めるようにして「楽しんでもらえたならいいんだけど」と呟く。
アンジェリークは天使という意味を持つ。天使は、誰のものにもならない。けれど、彼女を慕う人間は少なくない。オーブハンターたちは彼女を信頼し慕っていることなど見れば分かる。

「ロシュ」
「なんだ?」
「あなたも」

アンジェリークが好き?という問はさすがに出て来なかったが、は首を横に振って目の前にある鏡を見つめた。随分と情けない顔をしていて、弱っている自分がいることに気づいた。
 らしくない。レディとして、ナンセンスだ。

「なんだよ」
「……秘密よ」
「ちぇ、はいつもそうだよな」

 なけなしの金はたいて見に来てるんだからさーとぶつぶつ文句を言ったロシュに、は笑う。
 パパラッチなのに、ここまで此方の意図を組んだりだとか、ポーカーフェイスが得意なくせに実は子供っぽいだとか、実際に家を失い家族を失った彼と自分が似ているだとか、ロシュはにとって「」であれる場所だ。パパラッチなのに、だ。それは決して彼に対して言葉に出来ないこと。
 鏡をロシュは見つめながらちょいちょい、と自分の髪の毛を整える。
 薄紫の柔らかそうな髪が再び綺麗に整って、満足気にため息を付くものだから「十七歳の少年」であることを否が応でも思い出させる。

「ロシュ」
「んー」
「差し入れでもらったフルーツなんだけど、全部は食べ切れないから貰ってくれない?」

真っ赤な林檎を一つ、彼の掌の上に落とす。ロシュは少し驚いたが直ぐにおう、と礼を言うと指で林檎をごしごしと拭う。その姿を見て、は笑う。十七歳の少年らしい、くるくると変わる表情そのままだ。何がおかしいんだ、と彼は尋ねたが、彼女な「さあ」とだけ返す。
 彼の金色の瞳は優しく揺れて、真っ赤な林檎をがり、とひとかじりする。そんな姿もさまになっていて、思わず笑ってしまった。
 未だ、この感情は――彼女だけの、秘密だ。ロシュは「お前はいっつもそうだよなあ」と文句を言うが、それはきっと多分、お互い様なのである。そう考えながら、彼が手をつけていない林檎を一つとり、果物ナイフでさらさらと剥き始めた。


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[2011年 10月 30日]