Jyosuke Tsunami
「じょーすけ」
「おお、」
夕暮れの波際を歩きながらゆったりと彼女は彼の名前を読んだ。周囲からはにーにだの何だのと慕われているが、幼馴染のにとっては頼れる、というより
もちょっと三枚目なところが彼の良さだ、と称す。
制服の下からのぞく日焼けした姿に「また授業さぼってたんでしょ」と頭を抱えるような形で溜息をついた。
幼馴染だから迎えに行け、ということを言われることは流石に最近はないが以前はひどかった。海にいるから取りあえず、いってこい。
それを言われた数はもう両手だけでは足りない程度に数えられる。ああもう、仕方がないなぁ。
綱海はまーなぁと至極楽しそうに言うので、は再び溜息をついたのち、その右手を大きく振りかぶった。一瞬だけ綱海の顔が変わった。
ぱこ。
聊か鈍い音がするとチョップされたことに気付き綱海はこわばった顔のまま「はぁ?」と呆れた声をあげ首を傾げる。その顔が可笑しかったのかはコロコロと笑い「騙された」と手をぶらぶらと振った後大きな伸びを一つ。
小波の音がいつもより穏やかに感じられる。
ああ、静かだ。
「」
「んー」
「……お前、そんなちっちゃかったか?」
昔はもっと。そこまで言いかけて綱海には返答を許さないような喋り方で「当たり前でしょ」と彼のたてかけたサーフボードによりかかった。
昔と今は違う。
人は変わっていく。それはこの沖縄でだって、有里が一度も行ったことがない東京だって。海の向こうだって。どこでだって、ずっと、なんてものはない。
「へぇ、抒情的なこと言うなぁ」
「……私は条介の口から【抒情的】なんて言葉が出たほうがびっくりだよ」
ほっとけ。チョップを後ろからお見舞いした後に綱海と有里はしばらくの間そのまま海を見続けていた。