Yuto Wakana
「若菜とって息ぴったりだよな」
「そうか?」
と若菜が合計9年間ずっとクラス替えがあっても同じクラスなのは有名な話だ。それというのも若菜という存在は学校でやれ「U−14として世界と戦ってきた」だの「ジュニアユースで優勝」だの、様々な表彰をされたりだとか体育館で名前を呼ばれ表彰を受けたりだとかしたちょっとした有名人だからだ。
しかしながらはそんなことを気にする様子もなく、忘れてきた英語の宿題を必死に写している。
少子化なこともあってか学校が統廃合していきクラスの面々も顔を知っている人間が多い。流石に地区が広いせいか小学校中学とクラスが被っている人間は若菜しかいないが、それでも顔見知りは多いほうだ。
若菜は持っていたポッキーを食べながらそんなの様子をじっと見ている。
「、ここ違うんじゃね」
「嘘、どこ?」
「だって熟語使うなら for だろ」
「for example、で例えば?」
でもそうするとここの文章おかしくならない、と彼女は教科書を引っ張り上げて唇を尖らせて反論する。ポッキーを食べながらそうかぁ、と若菜は返事を返す。そもそも街を紹介し、街案内をする例文で「for example」を使う描写は無い。
実際使われているのは「手本」という意味だ。だが宿題をやってきていないは英単語なんてものは記憶のはるか彼方であり、若菜は話半分だから意味を理解していない。
「若菜ァ」
「なんだよ」
「」
「何?」
ぐる、と首をかしげた姿はどこか兄妹のようだ。思わずクラスメイトがぶは、と噴出してひいひいと机を叩く。何が何だか分からず暫くの沈黙の後にいいからさっさとやれよという若菜の容赦ない言葉が浴びせられるとはは、と現実に引き戻され黙々と再び作業に戻った。
彼らの中に存在する一定のリズムは今日も今日とて狂いそうもない。