shibusawa katuro
「かっちゃん」
「じゃないか」
店先で家の仕事を手伝っていた渋沢の前にひょっこりと予想外の人物が現れる。
互いに長い付き合いであることに間違いはないのだが、暫く見ない間にぐっと彼女も背が伸びた。まるで親戚をみるような目で彼女に視線を送れば片手にスーパーのビニール袋をぶらさげながら彼女はショーケースをじっと見詰めて「お使いで来たよ」と朗らかに笑った。
「今日お勧めは?」
「どら焼きが上手く出来てるぞ」
「じゃあそれ三つと、後苺大福、あと羊羹一個」
そんなに食べるのか、思わず顔に出てしまった渋沢に長い付き合いであるが気付かないわけもなく「家でみんなで食べるんだよ!」と慌てて補足した。
彼の母が店先で対応に追われているため余り長々と話すのも気が引ける。は財布の中身を確認しレジにその金を並べて待つ。ワンテンポ遅れて包装し終えた渋沢が「ありがとうございました」とレジ前に置く。
流れ作業で手早いあたりは流石というべきだろう。
「いつまで居るの?」
「盆の間はこっちにいるつもりだ」
「そっか」
じゃあそのうち遊びにどっかいきたいねぇ、なんて呑気極まりない笑顔を浮かべはその手を叩いた。店を一歩出れば夏の日差しがじりじりと道を照らす。
うわぁ、と小さな悲鳴をが上げると打ち水をするのか柄杓をこんこん、と彼は肩にたたきながら「暑いなー」と眩しそうに手で日差しを隠した。
「そういえば、部屋に漫画置きっぱなしだぞ」
「あ、十五巻だけ抜けてたと思ったらそっちにいってたの? よかったー。後でじゃあ取りに行くね」
じゃあまた。はそう笑うと店を飛び出していく。年を重ねているのに、眩しいくらいに彼女は変わらない。そんな奇妙な安堵感を感じて、ふう、と渋沢は小さく溜息雑じりに笑った。
2010.04.06
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