という人間は変わり者である。
何が変わっているって全体的に変わっているので、衛宮士郎の変わり具合が自分がそんなに変わっていると思わないで済む程度には変わっている。
衛宮切嗣宛に贈られてくるご大層なお中元であったフルーツパーラーのフルーツ型のゼリーに目を爛々とさせながらスプーンを回すの姿に思わず衛宮士郎はため息を付いた。
たいそれた魔術師というわけでもなく。
かといって人間でもない。
謎の多い人間と言えば謎の多い人間だ。自分の形を取っている異なる分身・アヴェンジャーから言わせれば「あれは人間じゃねえ」といっているので、余計に訳がわからない。
そもそも衛宮とエミヤと衛宮?が並ぶこの状況かでも十分に頭が痛い。揃いも揃って同一人物であるのだから、余計に衛宮士郎が混乱するには十分すぎる。アーチャーはどうしているのかと思えば遠坂凛と買い物に行くと付き合わされ、アヴェンジャーはカレン・オルタンシアにランサーを取り返すと躍起になっているマスターたるバゼット・フラガ・マクレミッツに付き合わされ駆りだされている。
「衛宮くんってもしかしてドM?」
「なんでさ! そんなことねえよ!」
「真なる自分は存外そうなのかもよー、いただきます」
結局迷いに迷ってリンゴの形をとっているゼリーを選び、長めのスプーンを差し込みつつは茶化すように笑った。士郎も釣られるように冷蔵庫に突っ込んでおいたゼリーからオレンジを選ぶとと向い合せになりながら不満顔で彼女を睨みつけるのだが、彼女には何も関係ない。
気分上々のまま、は話のネタとして衛宮とエミヤと衛宮?の三人を手元にあったトランプで説明をしていく。彼女のいう言葉にはどれも納得しかねるが、性分なのか思わず衛宮士郎は話に耳を傾ける。
スペードのエースを、衛宮士郎と仮定し、エースから進んでいくのが未来と仮定。その中の派生したものがとある未来のとある衛宮士郎の姿、それが英霊エミヤシロウ。所謂アーチャー。彼を仮定として「異なる世界のifの姿」としてクローバーの7として彼女はまた説明を続けていき、アヴェンジャーのところで手が止まった。
「んー、なんだろう、アンリはちょっとタイプ違うよね」
「そりゃあ、あいつ聖杯ン中にいる存在だしなー」
説明、といっても異質な存在であるのは自身であるためか、彼女は自分の確認のために何度か繰り返す。
その何度もループした世界も、聖杯戦争で繰り返した戦いも、彼女は知っているようで知らないのは、彼女がイレギュラー的であるためだろうか。
「じゃあ、スペードのエースが二つある感じ? あーでもスペードが仮定として衛宮くんなら、流れとして違うよね。んー、ジョーカーみたいな?」
「ああ、多分そんな感じだなぁ」
「てっきとーだなぁ」
じゃあはどうなのさ。半分まで減ったゼリーを食しながら視線を投げる士郎に、はああ、となんともいえぬ声を上げた。
衛宮士郎は家主であるにも関わらず妙にこの状況を「分かっているようでわかっていない」に等しい。がやってきた時も困っているから泊まれば良い。帰る場所がない。この世界の人間ではないと言われてツッコミをいくらしてみたところでも、結局エミヤシロウや遠坂凛、アヴェンジャーまで把握しているせいで一般人に等しい衛宮士郎はあー、だのうー、だのうまいこと言葉が出せないまま、この状況を生暖かく見守ることしか出来なかったまま、現在に至る。
取り敢えず、彼が知っていることといえば「は“人間デハナイ”」ということ。「は“冬木が存在しない世界に生きる存在”であるということ」以上二点である。加えて「彼女は今現在、困っている」という状況から彼の性分からついつい手を貸してしまった。それがどうしてか、今こうしてゼリーを2人で食しているのである。
平和だ。その姿は、衛宮士郎の望む平和の姿であった。
「私はほら、もともと同じ世界にえーと、この場合なんだろう。スペードのエースがあってさ、それで、同じ世界で見たくない自分がいるわけでしょ?「こんな人になりたくないなー」みたいな」
それが私の創りだした私。シャドウの私。寧ろ私。
いっそ私がゲシュタルト崩壊しそうな言い方なので士郎は目を白黒させた。彼女の言い回しは良くわからない。解読が難解、というよりも言っている意味が良くわからない。意味不明といったほうが等しいのだろうか。これをアヴェンジャーやサーヴァントである人々、そして魔術師は解読しているのだから、彼らはやっぱり変人である。
頭がパンクした状態になりながら麦茶を煽るとは意地悪く「アハハ」と笑った。小馬鹿にしたような笑いに残りのゼリーを一気食いすると士郎は扉を開ける。
「暇してんならほら、お中元のお礼探しに行くから行くぞ」
「衛宮くん、帰りにアイス」
「……今丁度ダブルでトリプルか。よし、お財布事情で5000円以下のお中元買えたら考える」
「乗った!」
最後の一口を食べ終えては両手を合わせごちそうさまと笑顔で言い放つとさっさと空のケースを流しでさっと洗った後にゴミ箱に捨てる。完璧すぎる流れに思わず吹き出しながらも靴を履きに士郎が玄関に向かっていく。
暑い、夏の日。
扉を開ければじりじりと太陽が彼らを照らし続けていた。