暑い日にはアイスって相場が決まってる


「信じられねぇ、恨んでやる」

「じゃんけん負けたが悪い」



 むっすうと不機嫌を露にしながらもジリジリと太陽が照らす坂道を自転車が二台突っ込んでいく。 半袖のシャツが少し汗ばんでいて一般的な少年の髪の毛の長さよりも少しだけ長いと平馬はその髪をうざったそうに振り上げては自転車を漕いでいく。

 コンビニエンスストアまであと少し、といったところで所謂 【 魔の坂 】 に当り二人は……というか主にが唸り声を上げた。




「信じらんねぇ、遠いところを遥々やってきてる俺に対してこの仕打ちは何だよチクショー!」

、自転車漕がないとコケるよ。 ……それに暇そうにしてたし」

「暇じゃねぇよ! こちとら万年大忙しだよ!」


 思わずずびし、とツッコミを入れるに平馬は少しだけ笑った。
がジュニアユースからユースにあがって少したった夏の日、監督に急に呼ばれて周囲を刺激するように言われた。 だから彼等の練習姿を見ていた。それだけのことだ。
 唯それを見ている人間からしてみればよほど暇人にしか見えないわけで。

 炎天下の中自分達が必死に走り回る中でテントの下、涼しく団扇片手に傍観されたら其れは嫌がらせの一つや二つぐらいしたくなってもしょうがないだろう。
 平馬がとばっちりを受けたことの方が正直言って同情すべきである。


「あーぢー……死ぬ……あーもうマジ死ぬ! っていうか何この坂道遠いし高いしいい加減にしろっつうの!」

「俺先行って良い?」

「却下! 一人は寂しいだろうが! 置いてくな!」



 むちゃくちゃだ、と小さく平馬は呟いた。 ――がは顔をきっと上げると行き成り自転車を立ち漕ぎにしゴゴゴゴゴと音を立てて漕いでいった。 置いていかれた平馬は取りあえず無言になったが其の後を直ぐに追い上げる。

 二人は、坂道を一気に登りきった。平馬が坂道を登っている途中に上り終えたはヤケにすがすがしい笑顔で海を眺めている。



「……何一人勝ち誇った顔してるわけ」

「んー、いやもう吹っ切れた感覚?」

「取りあえず買いもの終わってないから早くコンビニ」




 暑さに参っているのか平馬はぐいぐいとの背中を押す。もそれにおーとおやる気の無い返事をしながらも二台の自転車はキイコキイコ、と音を立ててコンビニへと向かっていく。 やがてコンビニを見つけると駐輪所に自転車を置いて彼等は気づけば早足から全力疾走になりコンビニの自動ドアの前に立っていた。

 ガーと音を立てて開く自動ドアと涼しい風に二人は思わず目を細めて大きく深呼吸した。遠くでコンビニ店員のバイトらしき声がする。




「あーやべ涼しい、平馬。 ジャンプ読んでから戻ろうぜ」

「意義なーし」


 二人は思わずニカ、と……というか主にがだが爽やかに笑って立ち読みを始める。どれだけ時間が過ぎただろうか。二人が読み終えた頃にはコンビニの中が肌寒く感じるほどになっていた。 思わずは平馬に何買うんだっけ? と急かし平馬もメモを読み上げる。




「コーヒー牛乳が三人、ウーロン茶が二人、ポカリ一人」

「ポカリもう用意してあるんじゃねぇの? ……まぁいいけどさ」


 ガコンガコンと、買い物籠の中にペットボトルを入れてあーでもないこーでもないと二人は会話を続ける。他にもメロンパン二つやサンドイッチ等など好き勝手に買い、最後に二人が目に入ったのは “ てづくり やきそば パン ” と可愛らしい文字で書かれた明らかに手書きの文字。 思わず顔をあわせて二人は頷きあい、それも衝動買いではあるが購入した。

 コンビニの外に出ると地球温暖化のせいか何かわからないが蒸し暑い空気が二人を包み込み先ほどの肌寒さはすっかりなくなってしまった。



「……へーま」

「焼きそばパン食べてかない? 腹減った」

「同じこと言おうとしてた」

 にやり、と二人は笑うとガサゴソとコンビニの袋から焼きそばパンを取り出して自転車置き場の近くで歩き食いをしながらグダグダと話し始めた。

 無論この後余りにも帰りが遅すぎて監督達に叱られたのは言うまでも無い。