「平馬、隣空いてっか?」 「後で人来るから無理。前ならいいよ」 即答する平馬に圭介は苦笑した。 「平馬、その隣誰座んの?」 「」 「あー……、今如何な訳?」 初日早々欠席したその男を思い出しながら圭介はスプーンでカレーを掬った。 自分と同じくジュビロユースの小田千裕は二人の会話に興味があるのか少し頷いてみせる。 。 十年に一人と言われたセンスの持ち主だとか、恐らく84年生まれの人間の中でもトップクラスの飛び出し能力――右サイドバック、言われればボランチとしての性質を持つ男。 「調子良いんじゃない?」 「――そういう問題じゃなくてさ」 「今日までユースの試合だったんだろ? 大丈夫なのか、アイツ」 言いたいことを丁寧に千裕が代弁してくれて、ナイス!と思わず親指を立てると、平馬は首を傾げて何が?と尋ね返す。
マイペースにカレーを頼むその様に周囲はあっけに取られるが、隣に居る監督に身体を強張らせる。 特にDF、左サイドバックを希望している連中の視線は釘付けだ。ポジション争いにおいて、間違いなくという存在は邪魔な存在であること違いない。 はマイペースに笑って「よろしく」と言うと自作のシーフードカレーの歌を歌いながら意気揚々と平馬たちのほうにやってきて、何食わぬ顔で平馬の横に座った。 「遅くなったぜー……高速込んでてさー大変だったんだぜ?」 「お前なぁ……もうちょっと周囲の空気読めよ」 「やだよ、嘗められるじゃん。相変わらずだな山口」 カレーを掬って一口口に入れて笑顔で言うに圭介は「お前、そーいう奴だもんなぁ」と苦笑交じりに言った。 疲れていただろうに大丈夫かという千裕の声にも車で熟睡してきたという はもりもりとシーフードカレーを平らげていく。 「……で?」 「ん」 「出たの?」 「おう、後半30分間だけどな」 「勝った?」 「あたぼーよ。 先輩のボレーシュートと、俺のごっつぁんゴールで2−0」 ふぅん。 それだけ言った後に平馬は黙々と食事をとり続ける。
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