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「よ、へーま」
「……」
ばん、と音を立てて横山平馬はドアを閉めた。
それを拒むようにチャイムの音が連打される。
家族が何事かとこちらを見ているが、平馬にとってはそれどころではなく――微妙に顔を青ざめた。
それでも、鳴り止まないチャイムの音に根負けし、ドアを開ければ両手一杯に菓子を持った親友の顔があった。
やっぱりか。
そんな呟きを他所に、は「よう!」と明るく言い放った。
「……年末のこの忙しい時期に、何?」
十二月二十九日。
年末カウントダウンにも程があるその日に、彼は一体何の用事なのだろうか。
をまじまじと見ていると、彼はにんまりと笑顔を作ってその両手の菓子を平馬に渡していく。 その菓子はどれもこれも、確かに平馬の好きなものだ。
ポテトチップスが何故Jリーグの選手カードがついてくるポテトチップスなのだろうか、という疑問もあるが、恐らく其れは当人の趣味だろう。
「何これ」
「うん、菓子」
「見りゃ分かるよ」
思わず即答を返す平馬にニコニコとは笑って「一緒に食おうぜ!」と言い放つ。 この忙しい時期に何を考えているんだ……思わず平馬はきょとん、とする中で、平馬の両親が健一郎を迎え入れ知らないうちにどんどん話のテンポが速くなり、気づけば自室で菓子を広げ、親がジュースを持ってきてという現状だ。
いくら平馬が能天気な性格とはいえ、流石に何事かと疑問を抱かずには居られない。
「……」
「あ?」
「どしたの」
「何って、お前誕生日じゃん」
何食わぬ顔で言うに、平馬は思わずカレンダーを見るために振り返る。
今日は、十二月二十九日。 そして十二月二十六日にはデカデカと赤い文字で「平馬の誕生日!」と書かれていた。 カレンダーを購入したときに一緒に居たに赤いマジックで書きなぐられたものだ。
「……三日前なんだけど」
「だーって遠征だったんだもんよー」
ぱきん、とチョコレートを食べるにああ、そういえばとお茶を啜りながら平馬はふと思い出す。
毎年この時期になるとユースの連中はどこかの海外のスクールと親善試合をするのだが、今年はそうか、も一緒か。
「ってことは天皇杯準決勝、見そびれた?」
「だあああそうなんだよおおお!!」
どん、とテーブルを叩いたにビデオを勉強机から取り出して、渡せば泣いた烏がもう笑うように「ナイス!」と親指を立てられた。
――単純だ。
「……で、大掃除終わったの、そっち」
「…………も、黙秘権を行使します!」
「意義あり」
裁判ゲームネタを使いながらあーだこーだと二人は話していく。年末だろうと、年始だろうと、夏休みだろうと、冬休みだろうとそれは変わらない。
結局、ビデオを見始めプロのタクティクスを見たせいか「サッカーしてーなー」と言い出し冬空の下二人そろって外に飛び出したのは、言うまでもない。
――
馬鹿をやれるような男子中学生の間柄が大好きです。
( 2003.03.09 )
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