何度でもPalmaを君と
01. 指先に心音
ぴいん、とギターのピックを掴んで弦を鳴らす。一つ目の音は指を押さえていないので、少し緩んだ音がした。ギターについての知識は一般的なことしか知らない。
だからこそ今このようにして音也に音を教えてもらっているのだが――彼は今思い切り自分の世界に入り込んでいる。
「らーらー、らーららー、ららーらーらーららっー」
音也の歌を聞いているのは嫌いじゃない。
ギターを鳴らすことをやめて、は彼の歌に耳を傾けた。明るい、楽しそうな歌。歌うのが好きで、楽しくて、いつまでも歌いたいという気持ちが溢れ出している歌。
だんだんリズムが取れてくる。テンポを手拍子を打ってつくっていくと彼はちらりとを見て、にこりと笑顔を作った。
ら、ら、らら…。何度も何度も壊れたレコードのように歌う。最初は音也一人で。次に手拍子を入れて。三度目はもわずかに歌って。
言葉は不必要だった。ワンフレーズを繰り返す。何度も、何度も。
やがて、暫くの沈黙の後に音也はその手をそっと差し出した。はその手をじっと見て、次にぱん、とその手と自分の手をたたき合う。
予想外のとのハイタッチに、音也は少し目を丸めたが、音也がいつもするような全開の笑顔をは浮かべて「今のよかった」と言うものだから、つられて笑ってしまう。
指先から、ドキドキが止まらないせいで音が溢れ出してくる。
いくつも、いくつも。
沢山の音が溢れ出して、止まらない。
「、もう一曲歌っていい!?」
「許可とらなくても歌うくせに」
「何言ってんのさ、も歌うんだよ! せーのっ」
らららー、ら・ら・ら。
先ほどとは異なるメロディーラインをなぞってイントロを歌い出す音也には瞬きを何度もして彼を見据えたが、彼はにウインクを一つするだけだ。
は観念したように肩を落とすと指先で空に楽譜を書きなぞるように動かし、音也の主旋律に和音を重ねる。そうやって幾重もの歌になって、すっかり二人揃って本来の目的である課題を忘れ去り、迎えに来た友千香・トキヤに怒られたのは言うまでもない。
※ Palma : スペイン語で「手拍子」
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