持ったいた武器をしまうと、リンドウが此方を見ていることには気づいてゆったりと振り返った。
腕を組んでいる佇まいはいつも通りで、昨日の酒は大分抜けているようだ。
おはようございます、と挨拶を一つ。
「……くんは、朝から元気だね」
若いっていいね。
目を細めたリンドウは下駄をつっかけるとからん、ころん、と音を立ての元へやって来る。
は姿勢を伸ばし、リンドウが来ることを待っていたが、ふと庭先に小さく花が咲いていることに気づいた。そういえば、と彼女は彼を振り返る。そこには矢張りというべきかいつも通りのリンドウがいて。思わず彼女は復唱した。
「竜胆」
「……何?」
「あ、いえ、花の名前です」
リンドウという花がどういう花言葉を持つのか頭の中を巡らせる。当然彼のリンドウという名前は偽名であること間違いないが、誰も何も言わないのでも言わずにいることにした。
彼は飄々とした態度で竜胆ねえ、と妙に落ち着いた声で言い返す。
庭先はまだ少し寒く、朝日が出ていないからか少し遠く感じられた。
「竜胆の花言葉って、リンドウさんご存知ですか?」
「いや、どうして?」
ふわり、とが笑う。漸く思い出して、妙に納得してしまったからだろう。
変に笑うに首を傾げると彼女は唇を開いた。
「泣いている貴女が好き、ですよ」
ぴったりですね。笑ったにリンドウはきょとんとしたが……直ぐに噴き出して笑う。彼女らしい一言だ。
「なるほど、君は食わせ者のようだ」
「……それはリンドウさんのことじゃないんですか?」
「さぁ、どうだろうね」
お望みなら、君を泣かしてあげようか。頬に触れて笑うリンドウには「残念ながらそういった趣味はないです」と笑い返した。
あっさりと頬に触れた手を離して、リンドウは肩を落とす。
「くん」
「はい?」
「君って、意地悪したくなる人間だね」
それは褒め言葉として取っていいんでしょうか。
彼女の問いに、彼は「さて、ね」とゆったりと笑い返し話をはぐらかした。
「そのうち、ご所望ならいくらでも泣かせてあげるよ」
「丁重にお断りしときます」
ふふ、と彼らは同じような笑いを見せて顔を見合わせた。
朝餉だと呼びに来る都が随分と二人が仲良く話していることに意外性を感じて声をかければ、彼らはそろいもそろって、「まぁ」だの「うん」だのと不思議なことを漏らしたという。