害虫から神子を守れ


「神子殿、何処かにおでかけかい?」

出たな気障野郎。思わず錫杖を構えたイサトにまあまあと片手で耕作は押さえ込みながらイサトの隣で耕作の存在を確認している神子に笑顔を浮かべる。
その瞬間に隣に居た切り揃えられた髪をしている陰陽師に睨みつけられた。

「神子、下がっていろ」
「え」
「君たち本当酷いなあ」

両肩を落としてやれやれと何処か演技ぶりながら彼女の両脇に居る八葉をさらりと交わして神子に手を振った。
直ぐに花梨を隠すようにイサトが立ちふさがったので不服を顔に出すと「しっし」とまるで犬のようにあしらうものだから、些か不愉快な気持ちになり耕作の表情が曇る。イサトはそれを待っていたかのような顔をして「お前が花梨の前に来るとろくなことにならねーだろ!」と的確な意見を叫び始める。

「耕作さんは、お一人で何かお買い物ですか?」
「まあ、そんなところかな。うちの従者が風邪を引いてしまってね」

牛車動かしたくても動かないから、自分で歩いて帰ろうとしていたところだよ。花梨の手を取ろうとするが、泰継の容赦のない払いにより妨害される。
何度か顔を見合わせて、仕方なしに両手を上げると花梨は苦笑いを落とす。何かにつけてはこの八葉という人間たちは耕作の邪魔をしてくれる。花梨の手を取れば勝真に離せと怒鳴られ、イサトに錫杖をつきつけられ、彼女の柔髪をそっとよしよしと撫でれば刀を今にも抜きそうな頼忠の眼光が光り、翡翠にいけしゃあしゃあと文句を言われる。
それほどに神子という存在が特別なのだろう、と耕作は考えている。
……否、正確には。

「君自身が、かなあ」
「何がです?」
「うん?いや、実はね」

神子殿って、本当に可愛いなあと思ったところだよ。
さらりと言った耕作の言葉に花梨は頬を朱色に変えて、そんな姿も可愛いねえ、と呑気に耕作は笑いながら彼女をまじまじと見るものだから傍に居たイサトが「耕作てめえ近づくな」と怒鳴ったり、泰継が陰陽術を放とうと韻を踏もうとしたり。
出かける予定だった耕作の予定は既にもう色々と変更が為されていたが、神子と共にこんな大騒ぎも悪くない。
そんなことをぼんやりと彼は考えていた。