Che tempo fa oggi a Regalo?

広場の近くにあるパン屋で働くにとって、毎朝6時半に海岸の方角からゆっくりやってくるアルカナ・ファミリアの男たちを見かけるのは日課の一つである。
どこの所属かはもちろん知らないが、その内の自分とそう年齢も変わらない薄い金髪をしているリベルタは何かと店にやってきてくれるので顔は知っている。
店の前をスコーパホウキでごみを掃いていると、今日もいつもと変わらず男たちが引き上げてきた。片目に傷を追った青年はの姿を見るとまるで猫に睨まれたネズミのように身体をこわばらせてみせる。どこかで何かしてしまっただろうかと困惑するのだがそのたびに隣にいるレガーロ男である色黒にたわわな黒髪を一つに結んだ男が何か茶々を入れている。
日に焼けた爽やかな男たちはが毎日此処を掃除しているのを知っているのだろう、やぁ、と陽気な声をかけてくる。

「ボンジョルノ、いい朝だな!」
「ボンジョルノ、今日は暑くなりそうね」

褐色の男は違いないと笑った後に、もう1人の男の背中を叩いた。
男はを見るとみるみるうちに顔色を変えて、まるで借りてきた猫のように硬直してしまう。岩や石像のような佇まいにも萎縮すると後ろにいるリベルタが「ああ、いつものことだからさ、気にすんなよ」と顔を出してくる。リベルタの言葉にほっと安堵をしながら、エプロンを思わず何度か叩いた後にしゃんと背を伸ばす。

「チャオ、リベルタ」
「チャオ! は今日もいい匂いだな」

リベルタの言葉に思わずどきり、とするが直ぐに彼はパンの匂いだと鼻をかぎ、彼の言葉に呼応するように腹がぐうぐうと音を鳴らす。その不協和音のような音に隣に居た男たちが腹を抱えて笑い出す。
朝早くから騒がしくもあるが彼ららしいと言えば彼ららしい。
ゆっくりと登った日差しと共に明るい気持ちになっていたせいか、思わずも口元を緩ませた。

「あっ、まで笑ったろー今」

子供扱いすんなよ、と剥れたリベルタに慌ててそんなつもりはないと否定をするが、既にもう笑ってしまった以上後の祭りだ。
どのように返したらいいのか分からずオロオロと言葉を探すが、結局上手いこと出てこないせいで彼女はスコーパを握っては地面につけて、そしてまた上に持ち上げるという単純行為を繰り返していた。
彼らの沈黙の横でチチチと鳥が鳴いては羽ばたいていく。
早朝からこの2人は何をやっているのだろうと男たちは顔を見合わせた後に、リベルタの頭をばしばしと矢継ぎ早に叩くと彼らは上機嫌に鼻歌を歌いながらずんずんとアルカナ・ファミリアの屋敷の方角へと足を進めていく。

「あの、ごめんね、リベルタ」
「いーや、俺は怒ったぞ!」

おずおずとした謝罪の言葉はあっさりと却下されてしまう。両ポケットに手を突っ込んで石ころを蹴るリベルタに、はなんとも言えぬため息を付いた。
強情な性格であることは何度か交わした言葉でも知っていたが、テコでも動かないリベルタの行動は自然と焦燥感を煽った。このままではは仕込みも中の掃除も終わらず店主に叱られ開店時間も遅れてしまう。それはどうしても免れたかった。そして何よりも、リベルタに対して不快な思いをさせてしまったのは申し訳がない。
小さなうめき声を上げてどうしたものかと考えていると、アイスブルーのリベルタの瞳がかちりとぶつかった。
その瞬間にリベルタが堪えきれなくなったのか吹き出して笑い、のヘアピンで上げられた頭をぺちんと叩く。調理をするにあたって清潔さに気をつけているせいか、広々とした額は軽快な音を立てる。その音に痛みよりも驚いてしまい彼女は思い切り目を閉ざす。それがよほど面白かったのだろうリベルタはもう一度更に吹き出した。


「うっそだよ、ゴメン、ちょっとからかってみた」
「……」
「えっ、あれっ、!?」


うつむいたまま、うんともすんとも言わないに思わずリベルタは身を乗り出す。僅かにスコーパが震えているようにも見えて慌ててゴメンと頭を下げるが、は何も言わない。
……恐る恐る、リベルタは彼女の顔を覗こうとしゃがもうとするとはぱっと顔を上げた。

「わっ」
「……お返し」


普段そんなことをしないの行動に驚いたが彼女は少しだけ目を細めて、「仕事戻らなきゃ。リベルタも、朝ごはんいいの?」とまっすぐ指を邸へ向ける。
……彼らを置いて歩いて行ってしまった男たちの存在をリベルタは思い出し慌ててに挨拶を交わしかけ出していく。
その後姿を眺めた後に、掃き掃除を終えてスコーパを終いに行こうとすると既に随分と遠くに行ってしまったりベルタが、に大きな声で呼びかけた。そのよく通る声に思わず手が止まり、足が止まり、身体が彼のいる方角へと振り返った。

「後でランチ買いに来るから、ベーコンのパニーニ用意しといてくれなー!」

それじゃあと姿を消したリベルタに、思わずは噴出すようにして笑った。
パニーニは日替わりでリベルタのリクエストに答えるようにはできていない。何よりもランチタイムはピークタイムでもあるので見習いのは目下会計が主体なのだから、作るにしても単純作業だ。
今日の日替わりパニーニセットのパニーニは何だっただろうか。メニューを確認するように扉を開けると、店のベルがからんからん、と彼女の上機嫌に音を重ねるように響いた。



Che tempo fa oggi a Regalo? :レガーロの天気はどう?

(2012.08.05)
*恵菜様リクエスト「アルカナ・リベルタとおとなしめ女子」