storia d'amore



ジョーリィは物好きだ。はその腕時計を見ながら思ったままに正直に述べた。
外海で流行っている腕につける時計をいち早く島で愛用しているあたり流行に敏感かと言えばそうでもない。
錬金術を用い指先で火をかけて葉巻をくゆらせる。
ゆらゆらと煙が天井に上って窓から外へ。その流れをぼんやりと見ていれば、サングラス越しからジョーリィは何かを物言いたげに此方を見てくる。
口数の少ない彼の心を勘ぐるのはは得意ではない。フェリチータのような特殊な能力も持っていないし、ジョーリィは饒舌とは言いがたい性格をしている。故にとの会話のキャッチボールはできているようで、できていない。

「……懐中時計じゃいけないの?」
「あれならばお嬢様の従者が持っていただろう。俺には似合わんさ」

だが、何だかんだで口調を「俺」と直しているあたり、彼はまだに対して心を開いているといって良いだろう。公的にファミリーの重鎮として行動する時と、私的で動いている時でどこか雰囲気を変えるジョーリィ。どちらもジョーリィであることには変わらないのだが、はそのわかりにくい心の許し方にただ、苦笑いをすることしか出来ない。
まるで子供だ。
葉巻がちりちりと、息を吐くたびに赤くなる。からすれば何故葉巻を吸うのか分からないが、レガーロ男の嗜みの一つらしい。よくわかないとジョーリィにいうと彼は咥えながら意地悪く笑うのだ。
その笑い方は少し馬鹿にしているようにも見えるので、が頬を膨らませていると黒革の手袋が彼女の頬を強めに突っつく。手を払いのけようとすれば、まるで腫れ物を触るように今度は頬をなぞり、喉元を伝うので奇妙な声を上げそうになる。の睨む目も、物言いたそうな唇も、結局のところジョーリィには通用しないし、勝てる見込みなど最初からないのだ。



その声は、を捕縛するには十分すぎる。その眼に見つめられるだけでの身体はざわめき始めた。喉筋を伝い、顎を掴まれると、それからはただ無音だった。黒い髪がさらりと彼女の額に重なりあう。時計をはめた左手でくしゃりとの前髪を払い除けて、額にもう一度口付けを落とす。
もう片方の手は彼女の腰に回っている。……逃げ出せることは不可能だ。けれど、はこの状況に思いがけず吹き出して笑い、彼の左手に自分の手をそっと絡ませる。


ジョーリィは物好きだ。
そして、そんな彼が好きな自分も物好きだ。

そう思わずには居られないというのに、彼の不器用かつ子供のような愛の向け方を受け止めるようにぎゅうと抱きしめた。