背中合わせになって微塵も動かないルカに流石に焦りはルカちゃーん、重いよー、動いてよーとまるでパーチェのような言い方で呼びかけるが彼は岩のように動かない。
ため息混じりにごつん、と頭突きをするとシクシク、めそめそとやっとルカは言葉を紡ぐ。鼻を啜る音には苦笑しポケットに突っ込んでいたティッシュを渡すと全て濁音をつけたようなありがとうごさいます、という声が聞こえてきた。
「泣き虫だなあ、ルカは」
「みたいに私は図太くないんです」
「その時点でもう図太いから」
海風が涼しい。が風を受けながら目を細めるとルカはにますます寄りかかり始める。30近い男のくせになんてよくやパーチェやデビトに笑われているが改めてルカはフェリチータのことになると周りのことが見えなくなる。勿論 や他の二人にとってもフェリチータというファミリーの紅一点には特別な思い入れがあるが、ルカはその上を行く。
「いいじゃない、父親とお嬢様がくっついたって」
「微塵も!断じて!よくありませんよあのジョーリィなんですよ分かってるんですか!」
熊のように吠えるルカにはもうどうしようもなく、なぜ自分がここにいるのか遠い目をしてしまう。
ジョーリィとフェリチータに関してはその傾向があることをも勿論気づいていたが、止めても無駄であることも把握していた。理由はモンドの娘だから、という感覚的なものではあるがの予想は的中した。
「まだパーチェやデビトなら邪魔しましたし祝福もそれなりにはしましたよ!二人には健全なお付き合いから先ずは交換日記からさせますが!」
「どこが祝福なんだか……」
でも、ジョーリィだけは!嫌です。
涙を目頭に溜めるルカにもまあまあと宥めるばかりだ。ジョーリィは彼の師であり父である。彼女は、デビトのように憎しみを持つわけでも、パーチェのように怒るわけでも、ルカのように否定するわけでもない。
彼は自分とは相入れない、理解の出来ない人間だ。パーチェもデビトもにとっては必要な人間で、ゆえに、彼らを困らせ利用するジョーリィに対し嫌悪することはあっても表面上はそつなく適度に過ごす。ファミリーであっても仲間でも友でもない、とダンテが言った言葉の通りだ。
そんな浮いた存在のジョーリィがドンナになるフェリチータを射止めたのだから騒ぎは大きくなって当然だ。結果、ルカのそばに今何故かこうしてがいる。
「パーパもジョーリィになんて……ううう」
「そうだねえ、うんうん」
「聞いてますか!」
まるで酔っ払いの絡み方そのものだ。はルカの帽子をくるくる指で回しながら、じゃあ祝福はしないのか、と尋ねるとルカはまた泣きながらお嬢様が選んだから、と言う。
「しゅくふふふくぐらららい……」
「はいはい、見栄っ張り」
帽子を目深く被せ、はその上から頭をぶつけた。
ごつん。
鈍い音がしてルカは何事かと振り返ろうとするもが今度は体をルカに寄せる。
「そんな弱虫泣き虫ルカにはまだまだ手のかかる幼馴染がいるんだから、元気出しなさいよ」
「嫌です可愛げもない!」
「……あー、なんかお腹空いたな」
まるで話を聞こうとしない彼女にちょっと、と彼は声をかけようとしたが、帽子をぐいぐい彼女は押し付けて、ばあかと一言言い残す。何がなんなのかわからず顔をあげたルカに、はにこやかに去って行く。を追いかけようとすれば彼女は笑って頭を叩いた。
「もしかしてあなた、励まそうとしてます?」
「そういうのは察して言葉にするもんじゃないでしょ」
いい男っていうのは黙ってるものじゃないの、笑うに釣られたようにへにゃり、とルカは笑ったがそのまま直ぐ泣き出してしまう。
最終的にああでもないこうでもない、言い争いをしながらパーチェや他の面々にからかわれ御黙りなさいと声を荒げるルカの姿があった。はそんなルカを見ながら上機嫌にティラミスを口に放り込んで笑うばかり。
何があったのかは、彼だけが知る。
cilindro:シルクハット