君と奏でるヴァルツェル



「なんだよ、あんたか」

俺はとてつもなく忙しいんだ。
キャベツの千切りに勤しむの光景に思わずスミレは少しだけ笑った。隣にいる男、ジョーリィに見向きもしないあたり彼はとてつもなく忙しい、ということなのだろう。
テーブルに座り、モンド、ダンテ、ジョーリィそして自分という奇妙な四人での食事を楽しんでいると千切りを終えたのかは料理をホールの人間ではなく自分で運んでくる。


「あんた、ここに来て大丈夫なのか?」
「なぁに、問題ないだろう。それとも何だ、俺がいるとお前さんは嫌か」

モンドの主張に素っ気なくは「別に」というとピッツァ・マルゲリータとボンゴレ・ビアンコのパスタを器用に並べていく。
取り皿を人数分持ってきて置くと、残りのオーダーのものを作りにさっさと戻ろうとするが、ジョーリィの気まぐれにより彼はその肩をしっかりと掴まれていた。

「……オイ」
「まぁ、何、君も話に付き合い給え。どうせ暇なのだろう」
「どこがだよ! 忙しいよ俺は!」

明日の料理の仕込みもあるんだよ。
呆れたようにいうの発言をさらりと彼は無視をして赤ワインを彼に注ぎ込む。業務中に飲んでいいのかというダンテの嗜める声も、厨房のの上司の言葉によりあっさり陥落した。別段、仕事中に飲むことに対しては違和感がないらしい。
……は肩をすくめると、ダンテに小さく礼を言った。
だが、レガーロ島の飲食店では調理人が調理用ワインを普通に飲んで調理をしている光景が多く見られる。
からすれば、これもまた日常茶飯事の一つでもあった。グラスを受け取り、「サルーテ」と乾杯の音頭を取った後一口口に含むと、その重さに思わず顔をしかめた。
重い上に、赤ワインの中でも濃いことで有名なワインの味だ。

「……血みたいだよな、このねっとり感」
「ほう、君は血を飲んだことがあるのかね」
「比喩的表現だっつの。俺は今からあんたらが頼んだメインを作るんだよ」

ごゆっくりどうぞ!
少々やけになった言い回しではあったが、ワインを飲みはさっさと去っていく。
その後姿を見ながら豪快にモンドは笑った。アルカナ・ファミリアの新たな一員にとパーチェが引っ張り込もうとしている話は度々聞いているが、彼はどうにも料理人としての仕事が適職なのだろう。
腕を捲り、2,3話している姿を確認するとにやりと口元が緩むのをモンドは感じ取った。

「悪い顔だな、モンド」
「ホント、こういう時は悪いこと考えてるのよねえ」
「そうか? いや何、中々に面白そうなのでな。……ううむ、リゾットも楽しみだ」

あんたがアルカナ・ファミリアのドンか。これが請求書だ。
そう突きつけてきた少年はさっさと帰っていったが、話を聞いてみると中々に面白い。ファミリーに入れたらいい起爆剤になってくれるだろう。入るとしたら――棍棒か。

「本人の意志は無視か?」
「なぁに、入ってから慣れるだろうさ」
「……」

不憫な。心のなかでダンテは厨房へと引っ込んでいったを哀れんだ。
この後、リゾットとメインディッシュを持ってきたが直々にパーパであるモンドからスカウトの話を聞き、口をへの字にしたのは言うまでもなく……。
彼のファミリー入りに「やったーこれでのご飯食べ放題だ!」とパーチェと棍棒一同が手を叩き合い喜んだのは、後日談である。