| モクジ |
「だからー、俺は!が好きなのー!」
やたらと力説してくるリベルタには流石に辟易している。
……力説されても、正直なところ、実感も何もわかないのだから仕方がない。会議場の円卓に腰掛けながら頬杖をついていると、本気だぞと何度も彼は机を叩いて主張を繰り返す。
彼の好意は大変嬉しいが、いかんせん彼女は本気にしている要素はない。手元に置かれたティーカップは空っぽになり、手持ち無沙汰に何度か指先で遊びを繰り返している。
「だーお前話聞けっての!」
「聞いてるってば」
「だったら!」
よしよしと頭を撫でると彼は嬉しそうに目を細め、そうじゃない、と机を叩いた。
ティーカップが少しだけ空に浮いたが、直ぐに沈む。
「そんなに直ぐ答えを出さなくてもいいじゃないの、リベルタ」
「だけど――!」
リベルタ。
彼女が額を小突くと渋々と彼女に同意するように一歩、二歩と引き下がった。
恋心、というよりも尊敬の延長線上に見える感情な気がしたが――は彼の頭を片手でわしわしと撫でて、手を放す。
セットされていない無造作な髪型は余計に無造作にあちらこちらに跳ねている。
「嬉しいよ、ありがとね」
「……そーやってガキ扱いしてんなよなあ」
「はいはい」
軽く頬にキスを落とすと予想外にリベルタは驚いた声を上げ、ずるずると彼女から離れる。真っ赤な林檎のような顔色に、思わずはくつくつと笑った。
自分も大概、デビトに毒されているらしい。悪友の顔を思い出し、彼の頭をわしわしと撫でると彼は顔を俯かせて何も言わない。
「リベルタ?」
「俺は、本気だからな!」
ばっと身を引いてかけ出していったリベルタに、ただただ取り残されたは彼の背中を見送り、その背中が見えなくなるとゆっくりと会議場を出ていく。
螺旋階段でたまたまノヴァに遭遇すると、彼は随分と首を傾げた。
「どうした?」
「……え?」
「顔が赤いが、風邪か?」
「…………ああ、うん、きっと」
口元を抑えてノヴァの横からすり抜けていくと、ノヴァは随分と首を傾げたが、特別気にする様子もなく……ゆっくりと階段を登っていった。
本日発売!おめでとうございます!
レチタティーヴォは伊語で「朗唱」オペラみたいなものです。
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