Tutto e bene quel che finisce bene.
「ピッツァはやっぱりマルゲリータがいいよなぁ、王道に」
もぐもぐと恐ろしい勢いで食べるパーチェには苦笑を落とした。いつも大食漢なのは知っていたが改めて豪快な食べ具合である。レガーロ島は確かに美食家が唸る食材とシェフが整っているが、それにしてもパーチェはよく食べる。十人前だろうと二十人前だろうと、ぺろりと食べてもしっかりとした筋肉を持った太らない体質は女性の敵であるとしみじみと考えるばかりだ。
は白ワインを飲みながらぱくぱくとあっという間に口に運ばれ消えていくマルゲリータを観察した。
「なんだ、。食べないのかー?」
「食べてるよ」
「少食だなあ、お前も」
体型の意地をよくもまあ出来るものだ。はワインをぐい、と飲むと辛口の白ワインが口に広がる。食前酒も甘めで美味しかったが矢張りワインは辛口が好みだ。
スーツ姿の二人がトラットリアで食事をしているというのに誰も気にもとめない。それは恐らくパーチェが人気者だから、だとか泣く子も黙る上に喜び始めるアルカナ・ファミリアの幹部だからだとか様々な理由もあるだろう。
は自分の分のマルゲリータを切り、口に運ぶ。チーズの味がよくしみた、王道のピッツァの味がする。
マリナーラも嫌いではないが矢張りランチに食べるならばマルゲリータだというパーチェの意見はあながち間違っていない。
「あ」
「どうしたの」
「忘れてたけどさ、お嬢がこの前ドルチェでおいしい店があるって教えてくれたんだよ」
「ああ、場所分かるから後でおみやげに買って帰ろっか」
いや、まず自分が食べてからだと大まじめに言うパーチェの食い意地には思わず笑った。
デビトにお前は食ってばかりだな!とからかわれても全く気にしない、ラザニア、ピッツァ、ティラミス。彼の言葉から出てくる言葉は食べ物ばかりだ。特にラザニアには思い入れがあるのか彼は軽く一人で四人前ほど食べている。
「ああ、ジェラートもいいよなぁ」
「今日はパンナコッタな気分じゃなかったの?」
パーチェはうーんと首をかしげ、まぁいいかと笑った。口元についたバジルが目に入り、それをぐいと手を伸ばし、拭うと随分とパーチェは驚いてきょとんと目を丸くする。
「ついてたよ」
「あ、お、おーう!」
ボトルを一人であけているというのに、はけろりとした表情でワインをまた飲む。パーチェはまた食べる。
お前らいいコンビだよ。そう笑って幹部が言っていたのを思いだした。
「なぁ、」
「うん?」
「って好きな奴とか居ないのか?」
ぺろりとマルゲリータ三枚目を食べ終えたパーチェに、は再び苦笑いを落とした。
もう何年か前から、ずっとこのやりとりが続いている。パーチェはに好きな奴がいないのかと問い、はまた同様にパーチェに問うのだ。そして二人の回答は大体一緒で、今はいない、で終わる。
「この前って俺のこと好きなんじゃないか、って言ってくれた町の人がいてさあ」
「へー」
「そうならさ、俺も嫌いじゃないし、うん、付きあおうか、って言おうと思って」
口にトマトソースをつけて言う言葉ではないが、実にパーチェらしい単純明快な話だ。
は「凄い極論!」と大笑いしたが、直ぐに考えてあっさりと「そうだねー」と言い返す。
二人の関係を説明するのは難しい。同僚で、男と女で、友情で、家族で、仲間。ファミリーに欠かせない存在で、そして自分を認め合える仲だ。
パーチェはよし、と上機嫌に笑うので、つられても笑う。
「んじゃ、帰りに教えてくれた子に花でも買うか!」
「ついでにフェリチータ様のために美味しいケーキと、コーヒーの豆も」
「おっと、その前にドルチェとエスプレッソ貰わないと!」
そんな会話が交わされたとある昼。まるで態度が変わらないものだからフェリチータが聞いてみるとは「パーチェはああいう人で、私もこういう人なので」と彼女の頭をぽん、と撫でていうばかりだ。
付き合っていようと何であろうと彼らは仲間で友情もあって家族なのだから当たり前なのだが、もうすこし甘い関係になればいいのにと呟いたフェリチータのためにルカが一肌脱ごうと空回りし、全力でと言い争いになり、終いには話がそれていかにフェリチータが素晴らしいかという会話にまで発展しまったのはまた別の話。
今はただ、食事と共に談笑を楽しむ恋人になった彼らをやわらかな日差しが照らしていた。
Tutto e bene quel che finisce bene.(終わりよければ全てよし)