誰よりもきみの理解者でありたい
いつから幼馴染だったと聞かれれば「いつの間にやら幼馴染になってました」としか言いようがない。
何故ならば、お互いを隔てているなんとも言えぬ何年かの関係というべきなのかそういったものがあるので、仕方ない。
眼の前に居る大きな身長にガタイのいい体格。何かしらのスポーツをやっているであろう幼馴染である青年には遠い昔の自分の思い出と照らしあわせてみる。
……少なからず、自分の思い出の霞がかかった世界にいる少年と、今こうして目の前にいる青年がイコールで結ばれるなんて全くをもってイメージが湧かない。
コースターの上に麦茶の入ったグラスを乗せると、男、火神大我はおう、とだけ返した。
「……あのさ、火神くん」
「おう」
彼はとは同い年である。学校は異なるが、件の出来事以降何かと彼はひょっこりと顔を覗かせることが増えた。加えて、世間では今現在進行形で夏休みである。
夏休みといえば海、花火、山、ほか諸々アウトドアに出かける人間もいれば来年の受験に控えての夏期講習を山のように入れている人間も居る。はそのどちらにも入りきらず、何をしているかといえば友達に誘われてカラオケに行ったり、ゲームセンターにいったり、泊まり回と称して少し遠目の県まで各駅停車の電車でお金をかけずに行ったり等等である。その話を退屈そうに、だがきちんと聞いている火神に逆に聞き返せばバスケ三昧であるという現状を一言で返してくるばかりだ。
クーラーのきいている彼女の家に彼が上がりこむのは大抵、部活動の後日が暮れてからのことだ。大柄な身体に着崩した制服を毎日毎日着ているあたり彼も律儀だと思うのだが、一方でも十分に律儀な部類であろう。
テーブルの上に広げられていた夏休みの課題を仕舞いながらは彼に問いただす。
どうしてうちに来るのか。
どうして私を探していたのか。
彼は僅かに目を見張ったが、直ぐにぷいと視線を逸らし、テレビの向こうのバラエティ番組で馬鹿笑いをしている司会を睨みつけるように見据える。
……どうやら答えたくないのだろう。無理に聞くこともないだろうとは自分の分の麦茶がはいったグラスを片手で掴む。
からん、からん。
氷が僅かにぶつかり合う音が妙に涼しく響いた。
妙な沈黙の後、ごにょごにょと小さな声で火神が何かを呟いた。
「……ら」
「え、ごめん何?」
「……おっまえ自分が聞いたくせに聞き逃すとかどんだけだよ」
あきれ果てたようにため息を付いたが、火神は目を細めて「絶対ェおしえねー」というのでは小さくええ、と悲鳴を上げ返した。
……そんな彼らの、少しずつ変わっていく夏の日。
2012.08.05