鳴り止まぬ拍手を君に
「あ、ちゃん!」
「おめでとう、士郎くん」
椅子にちょこん、と座っていたに駆け寄りながら「ありがとう」と吹雪は言うとひょいと彼女を立ち上がらせた。ずっと試合を見ていたのだろう。彼女の周りには彼女の学校の人々がしっかりと並んでいて、吹雪を興味深そうに見据えている。
「世界で、戦ってくるね」
「うん」
「……でも残念だなぁ」
「何が?」
「君とももっと一緒にプレーしたいのに、女子は駄目っていうのが」
公式戦だから当たり前のことなんだけれどね。心底残念そうに溜息を零すと、のその手をぎゅう、と痛くなるほどに握り、今度は彼女を見据えた。
あまりにも真摯な瞳に思わずは後ずさる。彼の行動は突拍子もないことと、更に言えば真っ直ぐなのだ。直球といっても過言ではない。嫌かと聞かれれば勿論嫌ではないが――羞恥心がないということには結びつかない。
「……士郎君、手」
「うん、熱いね。もしかしてずっと祈っててくれた?」
「!」
見られているはずなんてないのに。両手を握り締めて、祈るようにフィールドを見ていたことが何故分かってしまうのだろうか。思わず手を離そうとするのに、の手は士郎によって離すことを許されない。
体中が熱を持っている気がした。熱い。どうしよう。思わず視線を落とすと士郎は楽しそうに笑って「嬉しいよ」と漸く手を離した。
「あのさ」
「……な、何?」
「もう一度、おめでとうって言ってもらって良い?」
「……おめでとう、士郎君。世界でも、頑張ってね」
「うん」
「……あと」
久しぶりに会えて、嬉しい。
とてもとても小さな、かすれるほどの小さな声で、彼女はそう呟いて椅子にすたん、と直ぐに腰掛けて顔を俯かせて吹雪を見ようとはしない。……意表を付かれた、気がした。
「……僕も、嬉しいよ」
「……」
「……」
冷やかすように周囲の人々が二人を見つめていたが、二人にはそれ以上にどう反応したらいいのか分からずに、視線を合わせることも出来ず、ただ喧騒の中で二人の間に沈黙が出来上がっていた。しかしぱち、と視線があうと思わずお互いに笑いが堪えきれず、ふわふわと笑顔を浮かべくすくすと笑いあった。