「お前と不動は表裏一体って感じだな」
唐突に、はそんなことを言いながらポッキーをさくさくと一本平らげた。彼が言っている意味を鬼道はまるで理解できない。ぽかんとしていたが、暫く考え、漸く理解したら一気に怒りが沸々と湧き上がって来た。
誰が、どうして、どこが、あの男と似ているというんだ。
叫びたい気持ちを抑えながら「そうか」とだけ答えるとは薄く笑った。悟りきったというよりも、茶化しているような笑顔に腹が立ったのでポッキーを箱ごと鬼道は掠め取り、一本口に含む。
甘い。とても甘いチョコレートの香りだ。
「あっ、返せよ俺のメンズポッキー」
「阿呆なことを言うからだろう」
「失礼だな、お前。俺はほめ言葉で言ったのに」
鬼道との身長差は大きい。ひょいとが腕を伸ばせばリーチの差から箱はあっという間に彼の手に戻る。
「人と話をするときに物を食べているというのもどうなんだ!」
「せーな、お前は俺の母さんかよ!」
「こんなできの悪い息子、断る!」
ああでもないこうでもない。その会話のたびにポッキーの箱がいったり来たりいったり来たりしている。中のポッキーが割れないだろうかという心配はこの二人にはないらしい。
最後の最後にが箱を掴むと中に入った袋の中にあるポッキーの残りをざああと口の中に入れた。五本のポッキーが口の中で砕かれていく。
ごり、ごりごりごりごり。
「お前あれほど一本ずつ食えって言っただろ!」
「るへー! 大体図星つかれたからってなぁ、ポッキーとったのお前だろ!」
「誰が図星だ誰が!」
「鬼道が! 不動と! そっくりなのは今に始まったことでもねーっつってんだよ!」
自信満々に言い放ったに思わず鬼道は思い切り眉根を寄せた。
何を言い出しているんだ、この馬鹿は。
胸倉を掴んだままは「そっくりなんだよお前らは!」と繰り返し続ける。起動の脳裏に幾度となく不動の顔が思い出される。冗談じゃない。あんな、チームメイトを道具以下に見るような男と、同じだとこの男は言いたいのか。
「……違う!」
「お前がしてきたことだって、佐久間たちを追い詰めてたのは事実じゃん。……そりゃ、俺も、だけど」
「……違う、俺はアイツとは違う!」
「紙一重なんだよ、お前らは」
「煩い!」
お前に何が分かる。彼が口走った言葉には僅かに動いたがそれでも変わらぬ口ぶりで「分かるからこういってるんだろ」と言い放ち、胸倉から手を離した。
静寂が二人の間を通り過ぎる。何を言ったら良いのかも、何を話したらいいのかも、分からない。
……だが、はゆっくりと唇を開いた。
「お前ら、選考チームじゃチームメイトになるんだろ?」
「……」
「じゃあ、意地張っても、どうしようもねーんじゃねぇの?協力しないと、自分が残れないんじゃねぇの?……俺、みたいに行けなかったやつもいるわけだし、全力を尽くせよ」
正直なところ、お前が羨ましいよ。
の言葉が妙にストン、と鬼道の心に落ちた。そして帝国の面々を思い出し――雷門でも選ばれることのなかった人々を振り返る。以前のチームメイトだった塔子も、「女子」だからということではずされている。
沢山の人間の中から選ばれたということは、その土台になった、選ばれることのなかった人間もいるということだ。
そう自覚した途端、ふと力が抜けるのが分かった。だらり、と腕を下ろすと鬼道はゆっくりと瞼を閉ざす。
「…………悪かった」
「いい。気にすんな」
そういうと、二人は黙ってポッキーを食べ続けた。
一種のIFルート。選ばれた人と選ばれなかった人。